河口までは6時間。道は開通前(?)の高速道路のすぐ下のでこぼこ道を延々走り続け、時折、天井に頭をぶつけそうなほど跳ね上がりながら、ゆっくり慎重に進んだ。
しかし昆明→元陽もそうだが、不思議と全く車酔いしなかった。スピードが出てなかったこともあるが、一番の不安材料である乗り物酔いが、今回一度も現れない。前日、アルコールを控えて、しっかり睡眠をとっているのが良いのだろう。
河口には15:30についた。ガイドブックに載っていた安いホテルの宿泊費は倍になっていたが、しかたなく銀行で元をおろし、一部をドルに両替してからそのホテルに落ち着いた。料金交渉には応じていただけなかったが、120元のシングルルームは中国最終日を飾るに十分以上の価値を感じた。ひと部屋を占有できる喜びも、たまにはいいもんだ。
ホテルでラオカイ発→ハノイ行きの列車の時刻を聞くと、19:30と言うことだった。河口に一泊しなくてもよかったかな。
翌日、チェックアウト時間の12:00までゆっくりホテルで過ごし、イミグレーションへ向かった。係員に見守られながら出国カードに記入し、パスポートと一緒に提出し、建物を出て国境の橋を渡った。向こう岸はベトナムだ。
原則的にベトナム入国に関しては、15日以内の滞在にはビザは不要だが、出国用の航空チケットの提示が必要である。陸路ではまず問われないという情報は得ていたものの、多少緊張気味にベトナム入国検査官にパスポートを提示して待つこと数分。結局、一言も発さずに入国した。係員がおしゃべりに夢中のため、荷物検査もなし。
河口・ラオカイ間は、人も物資も往来が少ないのか、のんびりした雰囲気であった。
イミグレーション内の両替所で元をすべてベトナム・ドンにかえて、建物を出るとたくさんのバイクタクシーが声をかけてきた。すべて無視し、駅まで歩いた。ウールのスウェットの下は早くも汗だくだ。暑い。ようやく寒さからは解放されたが、いきなり暑すぎだ。でももっと今から暑くなるのだろう。
人々の格好もさまざまだ。Tシャツ一枚の人もいれば、ダウンを着込んだ人までいる。どこから来て、どこに向かうのか。それぞれ必要に応じての選択なのだ。
ラオカイ駅周辺は思っていたよりはいろいろあり、食事にも宿泊にもとりあえず困ることはなさそうだった。昼頃は閑散としていた駅前広場は列車の発着が始まる夕方以降、乗客やバイクタクシー、バスなどで埋め尽くされた。閉まっていた駅の切符売り場も再開し、19:30発ハノイ行き、ソフトベッドのチケットを30万ドンで購入した。
ドン。ちなみに駅前のカフェで飲んだ地元産(?)ラオカイビールが10000ドン、パン一個3000ドン、オレオ(小)1パック15000ドン、定番のフォーが10000〜20000ドンぐらい。基準をみつけるまでにしばらく時間を要した。
時間通りに出発した列車のコンパートメントには、ベトナム人の女の子が二人。車内を見に行こうか、ベッドでガイドブックを読みふけろうか考えていたが、出発して早々にメインの明かりを消されてしまった。枕元のライトでしばらくガイドブックを眺めていたが、なんとなく寝てしまった。ベトナム銀河鉄道の夜は、こうしてあっけなく幕を閉じた。