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Nylon Cold Drink

 ナイロン・コールド・ドリンクはマンダレーの83番通りに面したアイスクリームのお店だ。変わった名前だが、アイスクリームの他にもシェイクやデザートなどもおいしいと評判で、毎日、客足の絶えないカフェである。
 ミャンマーにおいても奢侈品であるアイスクリームの専門店の前には、新聞売りやバイクタクシーに混ざって、二人の乞食が慈悲をもとめていた。一人は両足が太股以下より無い(か、そのようにみえる)40代の太った女性で、もう一人は5歳ぐらいの男児であった。
 男児は私が席に着いてから、すぐに私に目を付けたか、外を見やる度に目が合い、その都度、左手を差し出した。二三度、そのようなことを繰り返すものだから、ついには私は外を見るのを止めてしまった。
 しばらくしてから、女の物乞いが何かを叱責するような声を聞いたので、ふと外を見ると、男児より少しは年長であろう、やはり物乞いの女児が、店の前の歩道を歩いていた。乞食は店の前の歩道より近くには入らないという約束事があるのだろう、女の声はそれを注意するものだった。すぐさま店員が駆けつけ、拳で女児の腕を突き、車道へと押し出した。女児は恨めしそうな顔で店員をにらめつけながらも、特に何も言わず立ち去った。
 店にいた他の客も、周りの誰もが無関心のように見えた。だから私も無関心を装い、アイスクリームに気持ちを戻した。相も変わらず、胸の奥にいるモヤモヤした暗い淀みが、私を覆い尽くしそうになるのを、冷たく、とろけるように甘いアイスクリームの味が押しとどめた。

 際限なく繰り返す飽食の末に得た無関心の味。

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