そういうわけで、おいしいお茶を求めて、市街をウロウロしたわけだけど、このダージリンという町は、山の尾根に沿ってあるので、どこに行くにも坂を上ったり降りたりしなくちゃいけない。なんだか毎日、登山気分だ。
まず最初にNATHMULLSという老舗のお茶屋さんを訪ねた。NATHMULLSはコルカタで出会ったインド通の佐藤さんに教えてもらったお店だ。カウンターにはずらりとスタンダード・クラスから、ミディアム、プレミアムと各2種類から3種類が並んでいて、親父さんに香りをかがせていただいたが、なんだかおいらの貧乏鼻にはドレもコレもいっしょに思える。
まぁ、なんにしても飲んで見なきゃわからないだろうと、ミディアム・クラスをお一つたてていただいたが、これがもぅ見た目の薄さにも関わらず、香りも味もしっかりしていて、さすが!っと唸らずにはいられない一品だった。ちなみにお値段は一杯25ルピー。安食堂ならカレーが食べれる値段だ。道ばたのチャイが一杯5ルピーなので、そのへんからも高級感がわかっていただけるだろう。
さっそくお茶っ葉はいくらか聞いてみたところ、ミディアム・クラスは150gで240ルピーだとのこと。日本円にして約600円くらい。インド国内の物価事情を考えると、決して安くはないけど、そこはほら。おみやげだし。ふーむ…。日本へ送ることも出来るそうなので、決めても良かったが、こういうときはやはり他店との比較も大事であろうと、いったん店を出た。
さすがお茶の名産地だけあって、茶店は行く先々にある。またガイドブックによれば、近くにはインド産の紅茶の15%を生産するハッピー・ヴァレー紅茶園もあるとのこと。各店舗を巡るのも、なんだか面倒なので、一気に本丸を目指そうと、紅茶園へ進路を定めた。
ダージリン駅をぬけてスィッキム地方へ向かう基幹道路をそれて工場へ向かう道は、見渡す限りの茶畑を九十九折りに下っている。茶畑には、今年の二番茶を摘むおばちゃんたちが、篭をさげて腰を折っていた。しかし工場は稼働しておらず、人気もなかった。密かに工場で直販するお茶を安く購入できやしないかと目論でいたが、当てが外れてしまった。また茶店で最も香り高い二番茶は、今年はまだ精製中だと聞いたので、もしや工場には既にできあがって出荷を待つ二番茶が眠ってないかと、にらんでもいたのだが、それも確認できずだ。
途方に暮れていると…(以下略)
こうして二番茶には巡り会えなかったものの、今年摘んだという一番茶を、安く購入できた。香りをかいで、試飲もしたが、正直、味覚に自信がないので、本当に良いものかどうかはわからない。その辺は、然るべき人に飲んでもらって、忌憚のない意見を伺いたいと思っている。
あまり紅茶は飲まないだろう母には、NATHMULLSで緑茶を買って、それらをまとめて郵便局へ持って行った。郵便局では待合室の隅っこで、荷物の梱包をしているおじさんに新聞紙と布(!)で荷造りをしてもらい、カウンターで料金を払って手配を済ませた。
緑茶を買った際には、やはり一杯いただいてみた。紅茶の時と同じく、一杯25ルピーのミディアム・クラスだ。いれた直後のお茶っ葉の香りをかがせてもらったが、なんとも、コレは、うぅ〜ん…、日本のかほり。久しぶりのお茶の香であった。お茶自体も、すばらしく、お代わりしたかったが、さすがにそれは贅沢かな?っと思って止めておいた。
チベット料理店では、バター茶も試したが、これはどうもおいらの舌にはあわなかった。飲みきれず残してしまったよ。
インド鉄道のNew Jalpaiguri駅からダージリンまでは、トイ・トレインという名前でも呼ばれるアジアでは最も古い登山鉄道が走っている。乗り合いジープ・タクシーの倍近い7時間30分をかけて向かうこの鉄道にどうしても乗りたい。行きは満員で乗れずじまいだったが、どうしても乗りたいので、ダージリン→ネパール→仏陀の足跡をたどる旅はやめて、いったんコルカタに戻って、南を目指そうと思う。鉄道と紅茶がダージリンに来た目的なのだ。
チケットを買いにダージリン駅を訪れたが、なんと一週間先までキャンセル待ちとのこと。仕方がないので観光客用に臨時運行中の特別列車を利用することにした。これはダージリンから一駅先までを往復するだけのもので、すこし寂しい気もするが、致し方ない。
しかしこれがまた、ホントに寂しい限りのもので、車窓の景色を堪能する間もなく、行って帰って来ただけであった。つまらん。まっ、乗ったと言うことで、ちょっと投げ槍な気もするが、満足することにしようかな。